わらいごとβ

お笑いはなぜおもしろいのか。おもしろいとなぜ笑ってしまうのか。お笑いについていろいろ書いてます。

とろサーモン久保田の炎上に対するアンサーラップ

一連の騒動に対して久保田は、今日12月6日に放送されたAbema TVで放送された「NEWS RAP JAPAN」の中でこのようにラップした。


とろサーモン久保田 aka MCサーモンが炎上の直後ラップを披露

歌詞の書き起こし

(段落分けは私がしました)

 

敗戦後の日本国民は

権力や財力などにひれ伏した

檻の中の羊のようになるように飼い慣らされた

 

強い者に立ち向かうヒーロー

悪い者を打ちのめすヒーローは

二次元では人気を集めるが

 

会社や社会の中では年長者権力者に

意見をすることが正しいことでも

 

罪人悪人のように大衆に吊るし上げられ

羊として生きることが正しいと

洗脳された家畜たちに批判される

運命にありますか

 

自己中心的で身勝手な思考に

見るものの反感を持ち

不快感を覚えてたくせに

 

誰かが権力に歯向かうとは何事だと

声を上げると一斉にそれに賛同

 

自分たちとは違う勇気ある者を潰しに来るのは

彼らがみな権力に逆らえない自分の生き方を

変える勇気がないのか

家畜人間だからです

 

だから僕はこの言葉が流行

ぼーっと生きてんじゃねえ

ぼーっと生きてるやつが入ってくんじゃねえ

ラップを披露した理由

ラップが終わると番組MCのDARTHREIDERに「なんか一番右の人すごいね」と振られるもとっさに反応できず「お前だよ、お前、一番右の人」と繰り返し突っ込まれた。「一番右」というキーワードに、久保田は少し戸惑っているように見える。やりきった感があるのか、覚悟の上ではあるがやってしまった感があるのか。DARTHREIDERの言葉のチョイスにセンスを感じた。

歌詞には五種類の人物(たち)が登場する。ぱっと見てわかりやすいのは以下の三種類だ。

  1. 「敗戦後の日本国民」、「檻の中の羊」、吊るし上げる「大衆」、「洗脳された家畜」、勇気ある者を潰しに来る「家畜人間」
  2. 「強い者に立ち向かう」「悪い者を打ちのめすヒーロー」、権力に歯向かう「勇気ある者」
  3. 「自己中心的で身勝手な思考」の「年長者権力者」

言うまでもなく、2.は久保田自身(とスーパーマラドーナ武智、ギャロップ林も?)、3.は上沼恵美子をさしている。1.にはネット上、特にTwitter上で批判を行っているアカウントや、批判的な記事を投稿しているブログが間違いなく含まれるだろう。

ここで歌詞の後半を読み返すと、1.は更にもう一種類の違う属性の人たちが含まれている。それは今まで「年長者権力者」に反感を持っていた。しかし「ヒーロー」久保田の意見に対し批判の声が上がると、潰しに来る。「年長者権力者」を不快に感じながら、その権力に逆らうことができない。

これは誰か。「年長者権力者」に対して久保田と同じ意見を持っていたのに、「潰しに来る」のは誰か。上で述べた「素人」たちではないだろう。「ボーっと生きてるやつが入ってくんじゃねえ」という終盤のラインは、「飼い慣らされた」大衆と大差のないような「家畜人間」が芸人の世界に「入ってくんじゃねえ」と言いたいのだろう。つまり、同じ不満を持っていた、周囲の芸人やスタッフのことだろう。この人たちの態度が、久保田にこのラップをさせた。

最後、5番目の登場人物となる「権力に歯向かうとは何事だと声を上げ」た「誰か」は誰だろう。これもいわゆる「関係者」だろう。先輩芸人か、所属事務所の上層部か。意見の中身を精査せずに、上下関係という形式で裁く。日本の一般の組織・集団以上に、かの世界では妥当な気もする。実際に炎上した動画において、周囲の久保田に対する態度は紛れもなく先輩・後輩のそれだった。

久保田さんが輝くための方法

特に結論があるわけではないけれど、吉本興業を辞めて自分で新しい場を作ったらいいのではないでしょうか。辞める必要はないけど、辞めたほうが覚悟が決まってキリッとする。さんざん泥水をすすった久保田さんなら、多少の辛苦はなんともないでしょう。久保田さんも39歳です。いつまでも「年長者」なんて言葉を使える歳・立場でもありません。M-1を立ち上げたとき、紳助さんは45歳、松本さんは38歳でした。

ラップで気持ちを表明したのは立派だったと思います。吉本興業やテレビ局・マスメディアは、上沼恵美子さん一人とは比べ物にならない「強い者」です。久保田さんは「強い者に立ち向かうヒーロー」として違和感を表明し続けるのか。それとも「権力や財力」をふんだんに持つ所属事務所に「飼い慣らされた」「家畜人間」として振る舞うのか。あるいは私たちのような一般人には想像もできない、芸人ならではの発想で私たちを驚かせてくれるのでしょうか。

常体と敬体が入り混じって気持ちの悪い文章ですが、ここまで読んでいただいてありがとうございます。